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この都心回帰の動きが顕在化してきたのは、実はこの5年ほどのことにすぎない。
それまでは、むしろ都心の人口は階段を下りるように、年々、減少しつづけてきた。
実際、平成5年から平成9年までの5年間では、23区中、人口が増加したのは江戸川区、練馬区、世田谷区の3区にすぎない。
8.4%も減少した千代田区に代表されるように、都心部ではむしろ人口は減少していたのであった。
これに対して、平成10年から平成14年の5年間では都心の人口は一転して増加に向かいはじめた。
都心3区の増加率は9.6%。
なかでももっとも増加率が高いのは中央区で、19.3%という、驚くべき急増ぶりを示している。
Nが、都心に特化したジュニアファミリー向けマンション構想を描きはじめたのは、平成7、8年ごろのことだ。
前記の動きが示すように、このころ、都心回帰の傾向はまだ、水面下で進行していたにすぎない。
だが、その段階でNは、誰よりも早く、都心回帰志向を確信したのだ。
だからこそNは、ジュニアファミリー向けマンションという、それまで誰も本気で取り組もうとしなかった、新しい市場に攻め込むことができたのである。
街全体が生活空間だという、新しいライフスタイルこの超都心回帰の傾向が顕著になった当初、まず、市場に登場したのは、東京駅まで十数分というような好立地に建つ、十分な広さをもったハイグレードなマンションだった。
分譲価格は億単位。
ホテルライクな機能をもつ最高の住環境であることは否定しないが、そこに住みつづけるためには、管理費、駐車場コストなど、月々の必要コストも数万円、もしくは2ケタ万円に迫る。
こうしたマンションに住むことができるのは、ごく一部の富裕層だけだ。
Nが、着眼したのは、そこまでの資金も収入もないが、でも、都会にこだわりをもち、都会型のライフスタイルを志向したいと願っている層だった。
こうした層は、新しい価値観をもっており、むしろ、それほど広いスペースは必要としていない。
たとえば、日常の食生活では、近隣のレストランやコーヒーショップをわが家の延長線上のようにとらえている。
日ごろは、こうした店でディナ・を楽しみ、休日はブランチもここでとる。
時には、料理を楽しむこともあるが、必要なものは、その日に、近隣のスーパーで買ってくる。
ストックなどする必要はないのである。
これは、文具や電器製品、ティッシュペーパーやトイレットペーパーなどの生活用品についてもいえる。
近くにコンビエがあれば、そこが″わが家のストッカー″なのだ。
365日、24時間営業なのだから、電池が切れた、歯ブラシが必要だ……というときに、コンビュまで足を運ぶだけでいい。
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